金宅(きんたく)
上海市青浦区朱家角鎮西湖街24号に位置する金宅は、民国15年(1926年)に地元の名士**金連巽(きんれんそん)**によって建てられました。金連巽は、かつて有名な「永泰元(えいたいげん)」絹織物店の株主であり、医師としても活動していました。
抗日戦争中、この邸宅は日本軍に接収され、憲兵司令部として使用されました。解放後は長らく朱家角鎮派出所の庁舎として利用されました。1997年には王昶記念館として整備され、一般公開されています。
金宅は南向きで、前後に二つの中庭があり、建築面積は約408平方メートル、奥行きは32.6メートルです。石庫門(シクーモン)様式の塀に囲まれ、鉄筋コンクリート構造の二階建てで、荘厳かつモダンな印象を与えます。前棟は三開間、幅12.7メートル、九架梁、硬山屋根で壮大な佇まいを見せています。軒はコンクリートのブラケットで支えられており、独特な意匠です。
後棟二階にはバルコニーがあり、三開間、前には軒(軒下回廊)、七架梁に加えてさらに一架を追加しています。窓には日除けの庇が突き出ており、こちらもコンクリートブラケットで支えられています。一階はタイル張り、二階は木製の床で、実用性と美観を兼ね備えています。
邸宅の裏には約600平方メートルの庭園があり、四角亭が二つと長廊があります。長廊には「美人靠(びじんかう)」と呼ばれる腰掛け付きの欄干が設けられ、内壁には王昶や劉墉などの書家による石刻書法作品が埋め込まれています。2004年、青浦区の登記不可移動文物として指定されました。
朱家角は恵まれた自然環境と便利な水運交通により、商業が発展し、往来が絶えませんでした。特に布業で江南地方に名を馳せ、「衣被天下」と称されるほどでした。商業の繁栄は郵政通信の発展も促し、ここにはポストやカウンター、家族の手紙、桟道の展示があり、殷商時代から清末・民初に至る中国郵政の歴史を垣間見ることができます。