歴史古橋

涌泉橋(ゆうせんきょう)


涌泉橋(ゆうせんきょう)

朱家角古鎮の南北を貫く主要水路・井亭港(せいていこう)沿いには、江南水郷ならではの民家が立ち並び、二岸を繋ぐ石橋が架かる美しい光景が広がります。この清流の上に東西方向に横たわる三つの古石橋が、「龍河三橋」と呼ばれる名勝です。三橋は、北から順に涌泉橋(ゆうせんきょう)、中龍橋(ちゅうりゅうきょう)、永安橋(えいあんきょう)で、井亭港を跨いで東井街と西井街を繋いでいます。

井亭港は放生橋近くの大きな湾に向かって蛇行し、その姿はまるで“珠を弄ぶ龍”のようです。また伝説によると、清朝の皇帝がかつてここを訪れ、橋を渡ったことから「龍河」の名が生まれたとされます。地元では井亭港を“龍河”と呼び、涌泉橋を龍尾、中龍橋を龍腹、永安橋を龍首と見立て、三橋が一体となって吉祥と繁栄を象徴する“龍”の形を成しています。

涌泉橋は清朝中後期に建造された単孔の梁橋で、花崗岩製です。全長15メートル、橋堍の幅約2メートル、橋面幅約1.5メートル。アーチのスパンは4メートル、矢高は3メートル。欄干の高さは60センチで、橋に座って涼むのに最適です。四隅には元宝(古代の金塊)を象った鼓形橋柱があり、独特の趣があります。東西両端には14段ずつの石段が設けられ、踏面には滑り止めの網目模様が彫られています。主橋面は両側の一枚石と中央の16枚の短石を組み合わせて構成。外側には楷書で「涌泉橋」と橋名が刻まれ、東側の橋洞内にも「涌泉橋」と書かれた石碑があり、これは後世の修復時に補刻されたものと考えられます。

この橋はシンプルで実用的ながら優美な造形を誇り、二岸を行き来する交通の要でありながら、訪れる人々に朱家角の“最初の美しい印象”を与える場所でもあります。


永安橋(えいあんきょう)
永豊橋(えいほうきょう)

朱家角